1977年に起き、日本を震撼させた「青酸コーラ無差別殺人事件」
無差別にばらまかれた青酸ナトリウム入りのコーラが、2人の命を奪った。
事件は1992年に時効となり、犯人、犯人の意図、などは、現在も一切、謎のまま。そんな事件から1か月たったある日、別の場所で事件が発生した。
大阪青酸コーラ事件<事件の詳細>
東京で起こった、青酸コーラ無差別殺人事件発生から1ヶ月余りが経った1977年(昭和52年)2月13日午前6時20分ころ菓子運送会社の運転手の千葉 真也(仮名)(39歳)は、出勤途中にタバコを買う為に勤務先の会社の数百メートル手前にある、自動販売機でタバコを購入したが、自動販売機の上にびん入りコーラが置いてあるのに気づき手に取った。
そしてそのまま持ちかえってしまった。
拾ったコーラを持って、仕事先の菓子会社の流通センターへ向かった千葉。
そんな千葉を同僚たちは「そんなん飲んだらあかん。 何か入っているかもしれへんで」と忠告。
まだ東京で起こった「青酸コーラ無差別殺人事件」から、まだ間もないので周囲も、このタイミングで拾ってくる千葉の行動を不審がるが、千葉は「一口飲んだけど大丈夫や」そして残りのコーラを一気に飲み干した。
その後、少し歩き出した途端、急に気分が悪くなった千葉は、事務所のシートに横になると、「手がしびれる」「寒気がする」と口走り、驚いた同僚は救急車を呼んで、午前7時半ごろ、病院に担ぎ込まれた。
点滴などの応急処置を受け、約1時間後には意識を回復した。
このとき、病院側の判断は一時的に体調を崩したか、腐ったコーラに当たったか、という程度で診察を終えている。
意識を取り戻した千葉は付き添った同僚2人に気になることを言った。
「酒屋の公衆電話のところに、もう1本コーラがあった・・・」
そう、実はこの時、千葉はもう一つの置いてあったコーラを確認しているのだ千葉の証言では2メートルほど横の公衆電話の台に、もう1本あったが、これは8分目しか入っていなかったため、千葉は誰かの飲み残しだと思い手を付けなかったというのだ。
同僚2人は急いで車を飛ばして証言した会社近くの酒屋へ向かう。
現場には千葉の言った通り、電話台のすみに中身が8分目ほど入ったコーラを見つけた。
はめていた手袋のままコーラを手に取り、手で王冠を引っ張ると簡単に栓が開いた。
「これは、東京で騒ぎになっとるのと同じかも・・・、大変や!」
警察でこのコーラと千葉が飲んだコーラを分析したところ、毒物反応は出なかった。
念のため、大阪府警科学捜査研究所に送って分析した結果、青酸反応が検出された。
「東京の事件は知っていたけど、コーラびんを見たときは思い出しもしなかった。2、3日前には子供に”変なコーラを飲むな” と注意したばっかりなのに・・・、不細工な話しや。関係ない人間を巻き込むなんて無茶苦茶や。自分でも防衛せなあかんと分かっていたのに。かっこ悪い、かっこ悪いわ」
千葉は事件から3日後の16日に退院した。
大阪青酸コーラ事件<不可解な謎の死>
その翌日の17日正午過ぎ、警察では改めて千葉に事情を訊こうと千葉の自宅を訪ねた。
玄関先で応答がないことに不審を抱いた捜査員が家の中に入ると、千葉は2階の居間で階下の台所のガス管からホースを引き、頭からビニール袋をかぶって倒れていた。
捜査員からの連絡で救急車が呼ばれたが、すでに千葉は死亡しており、家族が全員出掛けて留守の間にガス自殺したものと断定された。
遺書らしきものは残されていなかった。
千葉は妻に「こんな騒ぎになって恥ずかしい」と漏らしていたようだが、自分の行動を悔やんでの自殺とは考えにくい。
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大阪青酸コーラ事件<千葉の不自然な謎の死と行動>
千葉の行動について、現在でも謎が多く、なぜ自殺をしなければいけなかったのか。
以下に千葉の不自然な行動をまとめた。
①千葉がコーラを持ち歩いているところは同僚が見ているが、実際に千葉がコーラを飲んでいるところを誰も見ていない。
病院での臨床尋問でも、「現場で一口飲んだ」とか「会社の栓抜きで開けて飲んだ」など供述があいまいに変わっていた。
②東京での無差別連続事件をよく知っており、子供にも「拾ったコーラは飲むな」と注意したばかりなのに、あえて自分が飲むのは不自然。
③警察で、二本目に発見されたコーラと千葉が飲んだコーラを分析したところ、毒物反応は出なかったのに、大阪府警科学捜査研究所に送って分析した結果、青酸反応が検出された。
④救急車で病院に運ばれたとき、自分で歩いて診察室に入っており、血圧や脈拍ともに、正常だった。
千葉の体からは青酸中毒特有の血球異常やチアノーゼ反応もなく、医師も毒物の中毒とは考えられず、問診の結果から肝機能の低下と診断して点滴3本という治療しかしていない。
その1時間後に回復の兆しを見せており、むしろ、青酸コーラの被害者と分かって病院側が首を傾げたという。
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大阪青酸コーラ事件<まとめ>
東京で犯行があった「青酸コーラ無差別連続殺人事件」も犯人は捕まっておらず犯行の動機などは謎だが、大阪の同事件については、さらに謎だ。
多少の借金があったこと。
前年まで大阪のクギ販売会社に勤め、青酸を使用するメッキ工場に知り合いがいることなども判明した。
しかし最後の謎として千葉には何よりも家族仲がよく“青酸コーラ事件の被害者を自作自演する”という動機が全くない。
東京で起こった事件以上に謎が多く残る結果となった事件となってしまった。
あまりにも不自然な事件だが、動機や行動、全てにおいて謎が多すぎる事件ゆえに一番つらかったのは家族のだったのではないか。